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【読後雑感】 『母性という神話』 E・バダンテール  

読みなれるまでに、だいぶ苦戦した

でも、理解のためのいい入り口にはなったと思う

 

母性という神話 (ちくま学芸文庫)

母性という神話 (ちくま学芸文庫)

 

 

翻訳者の鈴木晶氏の「訳者あとがき」によると 

この本は1981年にサンリオから『プラス・ラブ』という題名で

本国フランスで出版された翌年に、日本でも出版されたらしい

これは出版社の意向による題名であるとともに

英語圏で『Love plus』と言う題名で当初出版されたためのようだ

 

プラス・ラブ―母性本能という神話の終焉 (1981年)

プラス・ラブ―母性本能という神話の終焉 (1981年)

 

 

作者の国、フランスで1980年に出版されたものが、

フランスでの反響の大きさとともに

英語圏でも大きな反響を得て、

1年で日本語化されたている

バブルに突入するあの時期にあっても驚きの速さだ

 

この本の出版当時、

作者の夫であるロベール・バンダテール氏が

死刑廃止運動の中心人物であり、

ミッテラン政権の法務大臣であったことも

注目のひとつの理由だったのかもしれない 

 

 

そして、死刑は廃止された

そして、死刑は廃止された

 

 

フランスという国が、人権問題に関してよく議論されている国という認識は

死刑の廃止論、女性の人権論などの話題とともによく耳にした気がする

 

ジェンダーを語るときに初期の提言として持ち出されるルソーの『エミール』と、

転換期の女性による反論ボーボワールの『第2の性』が

フランス人の手によるものだからなのだろうと私はずっと思ってきた

 

でも、『母性という神話』に書かれる16世紀から18世紀のフランスの状況を読むと

私の知らなかった当時の家庭環境と、そこからの国の状況が

この問題に取り組まざるを得なかったことに気付かされる

 

前提となる子育て状況

 

16世紀、17世紀のフランスの都市では

中流以上の家庭において、子育てを自分の家ですることが一般的ではなかった

職業紹介所で探した乳母のもとに生まれたての乳幼児を送って育てさせ

一定の年齢に達したら寄宿舎制の学校に送り込む

それが当時の彼らにとっての「文明人のやり方」であり「流行」だった

 

一度手を離れた子供のことは、あまり顧みられることはない

それは子供の命が失われたとしても、あまり問題視されることはない

次の子供が同じ乳母のもとに送り込まれることからも、それはわかる

 

 

もちろん弁護されるべきこともある

当時、遺伝的な病と考えられる病気が多く、

その原因の一つに「母乳」が挙げられた

良くないものを子供に伝えないために、母親の乳を与えないことは

「最新の文明の方法」だったのだ

 

 

革命という人口減少

 

当時の人口調査が今ほどあてにならないことは、著者も認めるところだ

でも税収を求める国家にとって、人を増やすことは切実な問題だ

そこで乳児の死亡原因や、子育てに光が当たるときがくる

ルソーの『エミール』の登場だ

 

 

エミール〈上・中・下〉3巻セット (岩波文庫)

エミール〈上・中・下〉3巻セット (岩波文庫)

 

 

安価な乳母に子供を預け、劣悪な環境で死んでいく乳児たち

乳母と言う仕事のために、さらに劣悪な環境に送られる乳母の子供たち

その子供たちを母の手に返して、立派に教育しようというのが「エミール」の趣旨だ

 

それは、夫の持ち物であった妻たちの「主権」を確立するものでもあった

(だからジェンダーとして取り扱っていたんだな~)

 

それまでの「文明人のやり方」を放棄させるためには、

新しい「文明論」が必要で

しかもそれは、女たちが邪魔にならない言い訳が欲しい

持ち出されたのが「母性」と「家庭を主導する権限」だった

 

それまで一つとしてなかった「権限」が手にできるなら

その獲得に乗り出した女性が、少しづつでも増えていったのは想像に難くない

そこには家庭から「権限を放棄することになった夫」の存在も見て取れる

「外のことは夫に、家のことは妻に」

お互い領分を犯さないように

 

 

それから200年、

「母性」と言う言葉で

母たちは様々な枷をはめられることになっていく

 

 

1980年のフランス女性

 

著者エリザベート・バダンテールは

「母性は存在しない」

と言い切る

そりゃそうだ

母性という名をつけられても

無条件の献身なんて、できるわけがない

 

もちろん今時の「文明人のやり方」で

「初乳を飲ませなきゃ!」

と、頑張って母乳を与えている母たちが大ぜい存在することは確かだ

でも、人工乳がよくなってきている中で

「母でなければならない理由」は減ってきている

 

 

1980年のフランスでは、

現在の日本のTwitterで見かけるような子育てに関する意見が

父たる男性からも、母たる女性からもたくさんあったようだ

この時期のフランスでは、女性の社会進出は国家の課題だった

(保育園の整備が急務のところまで、現代日本と一緒だな)

 

 

200年にわたる「母性」「母の責任」キャンペーンから一転、

「母性は存在しない」と言い切ると

ものすごい反論があったことは理解できる

今でさえ「母性本能」という言葉にロマンを感じている人は多いだろう

でも、どんなに子供がかわいくても、環境に恵まれたとしても

子育ては無理無理の努力無くして成立しない

 

子供がいない時の生活と、いる時の生活では

想像できないほどに変わってしまうことが多すぎる

体力と気持ちが付いて行かずに、逃げ出したくなることは誰にでもある

そこに「母性」は存在しない

 

雑感

 

子育ての評価は、たぶん子供自身にしか出せない

親がどんなに心を砕いて努力しても、

子供自身が拒否すればそれまでのことだ

 

親業と言うのは「役割」であって、

親になったからと言って持っているものではない

自分の中にモデルを作り、それを演じることで成り立つもののように思う

 

『エミール』はその時代のモデルの提示だった

そこから始まったものが200年、私たちの心を縛っているのは

もしかすると今もどこかで必要と感じているからかもしれない

現代の理想とするモデルが、

エミールを育てることをあきらめていないのかもしれないと思う

 

 

今後、

人としての自己実現が、個々のものとして認めあって

親であることが自己実現の一部であることを

認めあえる社会が来ること

それを願って本を閉じた

 

 

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